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2005/3/13  産経新聞「がん克服キャンペーン」
『患者の意識が医療を変える ―免疫細胞療法』大阪講演会 より収録

「私のがん体験」     元松下電器産業株式会社副社長   豊永 惠哉 氏
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私は 75歳、4年前に食道がんにかかり手術はせずに、放射線を主とした治療を受けました。

今のところ再発の徴候は無く、週 1〜2回のゴルフやたまには海外旅行へ行き、結構楽しい老後の生活を送っています。 私のがん体験が皆様のなんらかのご参考になればと思い、本日ここへお話をしにまいりました。

私は食道がんと知らされたとき、頭の中が真っ白になりました。私の義弟も親しい友人もその少し前に食道がんで死に、このがんは治りにくいがんだと分かっていたからです。私は、突然死の恐怖と不安のなかに放りだされたためか、何をしても、何を考えても、無気力になり前向きの発想がまったく無くなってしまいました。つまり、恐怖と不安からくるストレスのせいか、普段の思考力が停止状態で、からまわりしてしまったのです。この状態が続けば、私自身の生きる力は、どんどん弱くなってしまうと恐れるほどでした。いまになって考えてみると、がん患者が生きぬくために越えなければならない第一のハードルは、この死の恐怖と不安という心のストレスに、どう打ち勝つかであるような気がします。

私がストレスに打ち勝ったのは、幸いにも大阪に居たときに、高野山のお坊さんに勧められて般若心経の写経を行い、また幾つかの解説書を読んだことがあったからだと思います。と云うのは、不安の空回りから抜け出すために写経をまたやろうと思い、今度は一節写経をする度に、高神覚昇先生の般若心経講義(角川書店)を熟読しました。すると、不思議なことに健康な時は分からなかったことが、身につつまれたように分かったのです。何度か写経するうちに、あるときふっと気づきました。“こんな空回りする悩みにこだわってもしょうがない、どうせなるようにしかならないのだから”と・・・目から鱗が落ちたように、不安な気持ちが消えていきました。 今にして思えば、私は、これで第一のハードルを超えたのでしょう。

丁度その頃、食道がんの治療では、有名な東京御茶ノ水にある病院に検査入院をしておりました。心の悩みが吹っ切れると、よしこの際、食道がんの治療について、専門の医者が何を考えているのか、治療法としてはどのようなものがあるのか、その副作用、治療率などについての専門のお医者さんの話が正確に理解できるように、勉強することにしました。
幸い病院近くの本郷神田界隈には、医学書専門の出版社や書店が多く、食道がんに関する専門書や免疫学の本などを買いあさり、読んで分からないところがあると、巡回してくるお医者さんに聞きました。

最初は、お医者さん達もビックリしていましたが、だんだん本音で話してくれるようになり、ついには、自分の病状についても、がんの治療法の副作用、治癒率についても、あたかも他人の病気を話すように、客観的にお医者さんと話し合えるようになりました。また、親しい友人の外科医からセカンドオピニオンを聞いた際にも、治療上の専門的問題点がよく理解でき、自分の意思を決めるのに役立ちました。
私は、検査入院中の最後に、担当の教授(日本で最も有名な食道がんの専門医)と二人で治療法について話し、手術は行わずにEMRと放射線による治療をしようということになりました。がん治療法を選択するときには、治療しないことを含め、患者の意思を尊重することが大事だとおもいます。なぜならがんの治療には必ず、後遺症、合併症、再発のリスクを伴います。それらをふまえ、どの治療法を選択するかは、その患者がこれからどういう生き方をしたいのか、ということと密接に絡んでいるからです。
がん患者にとって第二のハードルは、治療法の選択をするとき、どう自分の意思を反映させられるかだと思います。私の場合は、自分自身の病状と治療法の治癒率および副作用について、専門のお医者さんが見る目と同じレベルで、自分自身を客観的に見れるよう努力をして、ハードルを超えたようです。

ここで話を変えて、医学の歴史を一寸振り返ってみましょう。
西洋医学の歴史上最も有名な医師は、紀元前 400年頃のギリシャのピポクラテスです。
ピポクラテスの医学の基本は、“人間は本来病気を自分で治す自然治癒力を持っており、医学の治療とは患者の持っている自然治癒力を最大限に発揮できる環境をつくってやることだ”と云うことのようです。この考え方は、 17−8世紀頃まで西洋医学の基礎であった様な気がします。また、最近の免疫学また免疫治療重視の考え方も、ピポクラテスの流れを組んでいるといえないこともないでしょう。

さて、がんになるということは、何らかの理由でがん化した細胞の増殖力に、自分の免疫力が負けた為だと云われています。
と云うことは、がんになり、手術、抗がん剤、放射線の治療により、がん細胞の塊を取り除くか殺すことが出来たとしても、一度がんに負けた免疫力のままでは、またがん細胞に負ける、即ちがんが再発する恐れがあるのです。
さらに、手術、抗がん剤、放射線の治療法は、免疫力を著しく弱めると云われていますので、がん再発を防ぐためには、比喩的に云えば、その弱まった分も含めて、発病前の健康時の免疫力まで回復しなければならないのです。
がん患者が越えなければならない第 3のハードルが見えてきました。それは、免疫力の回復であり強化です。

私自身は、次の三つの免疫力強化法を実行しております。

第一は、心の悩みからくるメンタルストレスは、免疫力を大変弱くすると云われていますので、私は、心の悩みの解消に最大の努力をしています。   私にとっては、仏教、特に原始仏教の勉強が、心の悩みの解消に一番いいようです。先程、般若心経のお話をしましたが、漢文のお経は私には難しい。もともと、お釈迦様は、人間の生老病死の悩みを救うために出家したのですから、もっと分かり易く話しをしたに違いないと思い、パーリ語から直接英語に訳したお経もあわせて勉強しております。それで、佛教についての、理解がぐんと深まったような気がします。関西には勉強しているお坊さんが多いので、心の悩みの解消には、地の利があるのかもしれません。

第ニの私の免疫力強化法は、生活習慣の改善です。私の生活習慣はあまり良い方ではなかったので、全面改訂するつもりで、免疫力を高めると言われている方法のうち、自分でなるほどと思ったものは、できるだけ実行することにしました。
まず食べ物では、発酵食品、野菜、果物、海草などを出来るだけ多くとり、また腸管免疫を刺激すると言われているサプリメントも飲んでいます。
次に身体を動かすことでは、気功の練習とゴルフです。その他温泉や針灸を行うとか、出来るだけ楽しいことを行うことを心がけています。
しかし、これらがどれだけ役立っているのか分かりません。

第三の免疫力強化は、先程江川先生がお話になりました免疫細胞療法です。二年ほど前に江川先生の著書を読み、これこそピポテラクスの考え方を、現代医学で積極的治療法として実現したものではないかと思い、瀬田クリニックに施療をお願いしました。
私の場合は、再発防止の為ですので、 1クール治療した後、現在は、2−3月に1回のペースで瀬田クリニックへ通っています。

最後に、がん治療を通じて私が感じたことをまとめますと、第一にがん治療法の中に、心の悩みを癒す方法を取り組むことは出来ないか。
第二に、現在健康保険の適用できるがん治療法は、手術、化学療法、放射線療法に限られているが、もし患者が欲するならば、他の治療法でも、柔軟に組み合わせることが出来ないだろうかと云うことです。

ご清聴有難う御座いました。



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